《平成29年4月度分プレアボイド報告》

本店より8件、西荻店より1件報告です。
長文失礼致します。なごみ薬局での取組みが素晴らしかったので一部ご紹介させていただきます。患者さん視点で、薬害を防ぐ専門家として今後も日々精進していきたいと思います。
また、ブログとして外部と共有することで、一人でも同じミスで副作用や健康を害すことが無いように、発信していきたいと思います。
※プレアボイド報告書について、詳細はなごみ薬局HPの1/27付けのブログにあります。

★本店★
①施設の患者様に、3/23フロセミド20mg 2T/2×朝昼 14日分 臨時処方あり。
ちょうど前日に同内容の定期処方2週間分納品したばかり(処方箋の日付は3/13)であり、今回の臨時処方は増量分かどうか、遅い時間で医師不在の可能性が高かったこともあり、まずは 処方医からの指示有無について施設看護師に確認。
→定期処方が出ているのに気づかず看護師が医師に処方依頼したものとのことで、処方削除となった。
●履歴画面上前回処方は3/13付けにて、3/23の同内容処方は前回処方と数日分重複するものの、継続分と捉えてしまうところだったのですが、たまたま次回定期用に準備されていた前回処方箋が3/13付けであり、前日が納品日だったことから もしや…と思い、連絡しました。
施設の定期処方は処方日と 納品日や実際の服用開始日にずれが生じているため、同内容の処方がきた場合、継続分か増量分か重複なのか、非常にわかりにくいのですが、参考までに 定期処方の処方日と納品日の差でいうと、目安として10日程度タイムラグがあります。

②施設患者様にPL配合顆粒の臨時処方が出たが、薬歴上ラタノプロスト点眼液を継続使用中であることに気づいた。
→施設看護師に診断名(高眼圧症or緑内障)を確認、緑内障だった(PL禁忌に該当)ため、その旨処方医へ報告。
処方削除となった。

③ ②と同内容(薬歴上使用薬はザラカム配合点眼液)。
●緑内障の型によっては禁忌に該当しないという薬剤もありますが、PLは特に型の指定なく「緑内障」全般 禁忌です。

④在宅患者様にかかりつけ医療機関から定期処方が出たが、今回バイアスピリン・ザンタック・メチクールは処方なし。
処方医へ問い合わせたところ、他の病院に入院されていた経緯があり、翌日 退院後初の外来受診予定があるため、上記3剤はその病院で処方してもらうように、との指示(確かに脳神経外科に入院されていたのであれば、そちらでの処方が妥当と思われる)。
翌日 病院受診後に受けた処方箋には、上記3剤について バイアスピリンしかなかったため、前日のかかりつけ処方医からの指示報告を含め、病院の処方医へ確認。
→ザンタックの代わりにファモチジンOD(入院中はこちらを服用されていた)が追加となった。
メチクールは脳外的には不要であり、必要があればかかりつけに処方してもらうようにとの指示が出たため、その旨かかりつけへ報告。
かかりつけからも処方なしでOKとの回答を得たため、その旨 薬剤管理者であるご家族へ伝達した。
●バイアスピリン服用時は、それに伴う胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制目的でH2-blocker(ザンタック、ファモチジン等)やPPIが処方されることも多いため、処方がなかったことで確認に至ったケースです。

⑤アドエア500ディスカス 1日2回、1回2吸入で処方。
500であれば通常1回量は1吸入であり、添付文書上適宜増の記載もないため、問い合わせ。
→1回量は1吸入に変更となった。

⑥施設の患者様に、タケキャブ20mg 1T/1×朝食後、セルベックス50mg 3C/3×(後発薬セルテプノンで調剤) 6日分 の臨時処方が出た。
履歴上、他医療機関より長期処方で ファモチジンOD10mg 1T/1×眠前、レバミピド100mg 3T/3×あり。
→他医療機関処方分はまだ服用中であること、臨時処方について 切り替え等特に指示はなかったことを施設スタッフに確認。
臨時処方の処方医へ 他医療機関より処方の上記類似薬2剤服用中である旨報告したところ、臨時処方を優先するよう指示あり。
よって、臨時処方服用中はファモチジンODとレバミピドを抜くよう、施設スタッフに電話連絡し、納品の際同様の文書を添付した。
●今回の『他院長期処方』は2月下旬に70日超処方されたもので、PC上履歴がかなり前に埋もれている状態でした。
症状の安定した慢性状態だと3ヶ月に一度という処方も多いため、その後臨時処方や2週間単位の定期処方がかさむと、薬歴初期画面(薬剤師が名前検索で患者様個人のページを開いた状態)からだいぶ前に遡って履歴をみないと、併用薬チェックが不十分になります。
自分の目で履歴を遡ってみるのはもちろんですが、直前処方のSOAPで併用薬情報として『◯月X日処方歴参照』と記載されていると 遡る目安になりますので、2週間定期処方のSOAP入力時に併用薬欄記載を工夫しておくとよいかと思います。
以前のプレアボイド報告でも同様のコメントを記載しましたが、ここ1ヶ月で新規入職の方々が複数人いらっしゃるため、再度記載しています。

⑥在宅の患者様に、往診医が以前から酸化マグネシウム500mg 3T/3×処方。
本人からの訴えで別の病院の医師がマグミット330mg 2T/1×夕食後を追加。
添付文書上 2000mg/日の上限があるため、病院の医師に問い合わせ。
→マグミット250mg 2T/1×夕食後(往診医処方分と合わせて2000mg/日)へ変更となった。
往診医にも増量となった旨報告。
●酸化マグネシウムは、血圧低下を伴う高マグネシウム血症で死亡例が出たことから、2015年に注意喚起が出ていますので、長期高用量では注意が必要です。
特に高齢者では、腎機能低下から高マグネシウム血症に陥る危険が高くなるため、より一層注意が必となります。
今回の患者様もかなり高齢の方でした。

⑦ミノマイシン100mg 2C/2×、セフゾンカプセル100mg 3C/3×と、同一処方箋内に抗生剤2種あり。
患者様より 胃薬を処方されたと話があったが、胃薬は処方なし。
→処方医へ問い合わせたところ、セルベックスカプセルを処方したかったが、誤ってセフゾンカプセルになってしまったという経緯が判明。
セフゾン→セルベックスに変更となった。
●抗生剤は系統・場合によっては2種併用することもありますし、抗生剤が処方されたからといって胃薬の併用が必須なわけでもありませんが、患者様とのやりとりで胃薬の件聞き取りができたことで正しい処方が判明しました。

⑧ナゾネックス継続分処方時の投薬にて、患者様との会話から、1日2回 1回1噴霧で使用していることが判明。
→1日1回 1回2噴霧であることを指導した。
●吸入薬や点鼻薬は、1日の回数と1回の吸入数・点鼻数があるため、混同されている患者様はわりと多いのではないかと思います。
局所用の薬剤でも過量では副作用の、少量では効果不十分の懸念があるため注意が必要です。
また、この場合『各鼻腔に2噴霧ずつ』にて、1日で4噴霧分使用が正解となります。

★西荻店★
炭酸リチウム200mg 2T/2×朝食後,眠前だった患者様が、今回の処方箋では200mg 1T/2×朝食後,眠前指示へ。
→前回来店時『眠気があるから、次受診したら量が減るかも』と話していたため減量自体は問題ないが、100mg 2T/2×となっていない(粉砕の場合の情報だが、原薬が強アルカリであり苦味が強いことから、半割ではなく100mg錠を使う方が妥当と思われる)ため、医師からどのような話があったか患者様へ確認したところ、眠前1回の可能性が高かったため問い合わせ。
→200mg 1T/1×眠前 に変更となった。

 

「プレアボイド」という言葉をご存じでしょうか?

1つ提案(プレアボイド報告を始めましょう という内容)があり、説明させていただきます。

「プレアボイド」という言葉をご存じでしょうか?
「PREvent and AVOID the adverse drug reaction」の略称で、「副作用の未然回避」にあたります。
ただし、実際には副作用回避のみに限定せず、「薬剤師がその専門性を実践した結果、既知の副作用を回避できたり、早期に発見したため大事に至らなかったなど、薬物療法の安全性を守ることができた事例や、経済的に貢献できた事例」とされており、日本病院薬剤師会では、その事例を報告する制度があります。
また、都道府県によっては、その病院薬剤師会内において、プレアボイド報告に対し「最多報告賞」や「ベストプレアボイド賞」等表彰もあります。
調剤薬局でも報告制度があるのかどうか調べてみましたが、中野区薬剤師会、東京都薬剤師会、日本薬剤師会では規定の報告制度や専用の報告書はないようでした。
一方、一部地域や薬局で独自に行われている例はあります。

今回、なごみ薬局内でもプレアボイド報告を行ってみてはどうかと考え、報告書原本を作成してみました。
多忙な業務の中 報告書を記載しなければならないという負担・デメリットはありますが、下記メリットが期待できるのではないかと思われます。

①プレアボイド事例は、重複投与・相互作用等防止加算の対象となる場合もあり、加算=増収 につながる可能性がある。→会社のためになる。

②プレアボイド事例を共有することで、注意すべき観点が洗い出され、皆が共通のレベルで対応できるようになる(当初自分では気づかなかったプレアボイド事例にも、気付けるようになる)。→各個人のレベルアップ、会社としての底上げになる。

③今後 新卒入職者がでた場合、蓄積されたプレアボイド事例が教育ツールにもなる。
→個人かつ会社のためにもなる。

④何といっても患者様のためになる!

現時点では「報告=報告書を記入する」であり、前出の通りそれを外部に報告する制度はありませんが、重複投与・相互作用等防止加算の観点から、世の流れとして今後プレアボイド報告は必然になってくるのではないかと思います。
今後の運用次第によりけりのため、やってみないことにはまだわかりませんが、例えば下記方法により更なるメリットもあれば幸いです。

・優良なプレアボイド事例を店内に掲示したりHPにアップしたりすることで、
a) 患者様のお薬手帳利用率↑(医療費削減に貢献)、信頼性↑により当店利用者・利用率↑
b) 薬局のアピールになり、求職者問い合わせ件数↑

プレアボイド報告はある意味インシデント・アクシデント報告とも紙一重ですが、インシデント・アクシデント報告が主に反省を含め再発防止のためのもの(これもとても重要なことです!)であるのに対し、プレアボイド報告は薬剤師の職能アピールという要素から、患者も薬剤師も会社もwin-win-winな関係になれる前向きな作業であり、インシデント報告とプレアボイド報告の両方を行うことで、より なごみ薬局の質を高められるのではないかと思います。
報告書記入時間は新規発生してしまいますが、患者様からの聞き取りや医師への問い合わせを含め元々日常業務として行っていたことを「報告する=文書化する」だけであり、特別身構える必要はありません。

プレアボイドの定義上 通常 報告者は薬剤師に限ったことになりますが、残薬有無・重複投与・患者の訴え等は受付時・入力時に事務の方々が把握し、薬剤師にその旨声掛けして下さっており とても助かっていますので、事務職も報告者の対象として始めてみようと思います。

日本病院薬剤師会でのプレアボイド報告内容は、基本的には患者に介入したことによって発見されるものである(※下記参照)ことから、1枚の処方箋のみで気付いたもの(通常1日1回の薬剤が1日2回で処方されている、空腹時投与薬が食後指示になっている、等)は通常の疑義照会にあたり報告対象外となりますが、今回はそれも対象として まずは幅広く報告を収集したいと考えています。

※日本病院薬剤師会でのプレアボイド報告対象例
・複数の医療機関からの処方箋を同時に持参された際 併用禁忌薬があった
・体重の聞き取りをしたところ 薬剤がかなりの過量だった
・過去の患者登録情報から禁忌と思われる薬剤が 今回処方されている
・残薬があるため処方日数調節や処方削除を患者から依頼された
・患者の話や様子から副作用が疑われた
・PCの薬歴上orお薬手帳上 別の日に他科・他医療機関より同一薬剤又は同効薬が処方されており 今回増量ではなく重複投与が疑われる、等

記入用の報告書は、クリアファイルに入れて 欠品薬ファイルの並びにあります。 報告書提出用クリアファイルに入れて下さい(報告日の古いものが下になるよう、上に重ねていって下さい)。

以上です。

社員が自発的に初めた取組ですが、一人でも多くの人を心から元気にするため、少しでも行動を発信しようと思っています。
地域があってのなごみ薬局ですので、皆様の健康増進のために、真摯に誠実に、継続していきたいと思います。引き続き、なごみ薬局をどうかよろしくお願いします。