薬剤師 M.I
(1)プレアボイド制度の概要
日本病院薬剤師会(以下、日病薬)では、医療現場の薬剤師が薬物治療において患者に対する不利益の回避および副作用発現を最小限にとどめるために行った事例報告を「プレアボイド(PREvent and AVOID the adverse drug reactions )」という呼称で収集している.
(2)プレアボイド報告の種類
□副作用回避報告:すでに副作用が発現している可能性が高く、それを薬剤師が発見し悪化を防いだ
□未然回避報告:副作用は起こっていないが、副作用が起こる可能性がある場合に介入した
□薬物治療効果の向上:薬剤師の処方提案により治療効果が向上した
疑義照会≠プレアボイド
日病薬によると、処方薬情報のみから発生した疑義照会は薬剤師の責務と判断し、プレアボイドには含まれない。
(3)プレアボイド報告目的
✓地域支援体制加算の施設基準の要件としてプレアボイド事例の報告が義務.
✓事例の収集・分析・情報共有により薬剤師としての資質向上.
・医薬品の有効性および安全性の最大化
・薬学を学んだ者が持つ独自の専門性(製剤学・薬理学・物理化学)を発揮し,治療効果を増大に貢献
・薬剤師の存在意義を示す材料
(4)プレアボイド事例
2017年―2019年2月時点において,なごみ薬局におけるプレボイド報告は48件であった.
発見の発端は,処方歴33%,お薬手帳25%および患者の会話25%であった.
(fig.1)
具体的な報告内容に関してはtable1に示した.
集計により,薬物治療における患者に対する不利益の回避において,改めてお薬手帳情報の重要性が示されたと思われる.また,発見発端ツールとして患者との会話が有用であることから,我々は,患者が薬物治療に関して”困っている事・感じている事・少しでも気になる事”を主張しやすい関係性を創り出すことが重要だと思われる.
ただ現在,収集した事例数が少ないため,何かを結論付けることは難しい.
今後も事例の収集・情報共有を引き続き継続し,質の高い薬物治療の提供に貢献していくよう努力したい.
Table1 プレアボイド事例の概要
変更点(変更前→変更後) |
状況
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自己判断で服用していたアボルブ
→中止指示
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54才女性.頻尿時,夫の処方薬を自己判断で服用.本剤は女性に対し禁忌である旨を説明し,服用中止を理解させた.
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芍薬甘草湯
→大建中湯処方追加
芍薬甘草湯処方削除
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定期処方薬は芍薬甘草湯および大建中湯だったが,患者とのやり取りから、芍薬甘草湯は残薬があるため不要・今回は大建中湯が欲しかったとのことだった.
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VPAシロップ4mL 朝夕食前
→朝夕食後
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入院中の本薬の用法は、食前であったが退院後の往診医による
処方では、本剤が食後の指示であった※1).
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アムロジピン錠2.5 mg 朝食後
→夕食後
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本剤は夕食後で継続的に処方されていた.今回、患者はDO処方だと医師から説明を受けていた.
問い合わせの結果、用法が夕食後へと戻った.
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フェキソフェナジン60 mg 2T/朝夕食後
→処方削除
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お薬手帳上、他院皮膚科よりアレグラ60 mgが84日分処方されていた.問い合わせの結果、本処方薬は削除.長期処方のためお薬手帳をかなり遡る必要があった.
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リンデロン点眼・点耳・点鼻液(左眼)
→(左耳)
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投薬時に外耳炎であり耳垂れがあると聴取.Dr問い合わせの結果、左耳への点耳へと用法が変更となった
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フェブリク10mg 1T/1.
(金・日・火曜日服用)18日分
→28日分
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他定期薬剤は64日分で処方.患者より残薬はないとのこと.
Dr問い合わせの結果,28日分へと変更になった※2).
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ツムラ葛根湯エキス顆粒7.5 g
→クラシエ葛根湯エキス錠18T/day
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服薬指導時に,粉薬の服用が苦手で飲みたくないとの発言を聴取.Drに患者の希望および本処方量に相当する他メーカーの錠剤数に関して情報提供を行い,処方が変更となった.
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トラネキサム酸錠500mg 2T/2X
→トラネキサム酸錠500mg1T/2X
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透析患者のため減量が必要だった※3).
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ゾフルーザ20 mg 2T/1.
→ゾフルーザ20 mg 4T/1.
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投薬時,体重が80kgを超えていることが明らかとなり,Dr問い合わせの結果,本剤が増量となった.
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ホスレノールOD錠500mg 3T/1X
→500 mg 3T/3X
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本剤1500mg/回は用量として問題ではないが,分3で継続している処方薬であったため問い合わせ.
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リスペリドン錠2mg分4(4-4-4-3)
→リスペリドン錠2mg分3(4-4-4)
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前々回の処方はリスペリドン錠2mg6T/3.の用法用量であったが,前回はリスペリドン錠3mg 4T/4.の用法用量だった.
患者は前々回の飲み方を希望したが,Drは就寝前の処方を消し忘れた.リスペリドンの1日最大量12mgを超えていることに気づき問い合わせ.
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メキタジン小児用細粒0.6%0.35 g/2.
→処方削除
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お薬手帳より他局からセチリジンが交付されていたことに気が付いた(皮膚疾患により長期服用中).両剤は第二世代H1受容体拮抗薬のため問い合わせ.
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フスコデ配合錠9T
→デキストロメトルファン15mg 6T/3.
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お薬手帳上,他局からザルティア錠(タダラフィル)が交付されていることに気がついた.
フスコデは前立腺肥大等下部尿路に閉鎖性疾患のある患者に禁であるため,問い合わせ.薬剤変更となった.
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