【外部勉強会報告】
「GLP-1 Symposium for Pharmacists 2022」R4.11.6 10:00~12:00 オンライン
Contents
概要
・2型糖尿病に用いる経口GLP-1作動薬。食事療法を助ける経口製剤のイメージ。
・通常成人は1日1回3mgから開始し、4週間以上投与した後、1日1回7mgへ増量する。患者の状態に応じて適宜増減するが、1日1回7mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合は1日1回14mgへ増量できる。
・膵β細胞のGLP-1受容体に選択的に結合→ATPからcAMPの産生促進→グルコース依存的にインスリンを分泌させる。血糖が高い場合はグルカゴン分泌を抑制する。
空腹時投与
・1日のうちの最初に空腹の状態で水120mL以下とともに3/7/14mgを「1錠」服用する。空腹時の理由は、絶食時間が長いほど効果を発揮するため。
吸湿性が高い
・奇数日の処方は避け、偶数日で処方してもらうと良い。高吸湿性のため、切り取り線のない箇所(縦にカット)は控え、ミシン目でカットする。
・胃カメラを撮る場合、当日はリベルサス休薬も一つの方法。高吸湿性のため、食道に薬が張り付いていることがある。
・薬を水無しで服用すると食道でくっつくことがあるため、水120mL以下とともに服用し薬を胃へ流し込む。
経口投与が可能
・セマグルチドはペプチド骨格を基本とし分子量が大きいこと、胃の分解酵素によって分解されることから経口投与が難しかった。
・ペプチド骨格8位にアミノ酸修飾を施しDPP-4に対する安定性を向上。また26位にリンカーと脂肪酸の結合化学的修飾、34位に脂肪酸結合を阻止するよう設計され、セマグルチドの分解を遅延させる。半減期は約1週間まで延長される。
・吸収促進剤のSNAC(サルカプロザートナトリウム)が局所的にpHを上昇させ、タンパク質分解酵素からセマグルチドを保護する。いずれの規格にもSNACが1錠300mg含有されている。300mgが一番効果的のため、リベルサスは1回2錠で服用しない。
・以上の点から経口投与が可能となった。
セマグルチドの注射剤と経口製剤の比較
・リベルサスと同成分のオゼンピック皮下注は既に発売されている。
・リベルサス7mg≒オゼンピック0.5mg換算。
・注射の体内吸収率は高いが、経口投与は幅がある。投与経路も関係するが、被験者の服用方法にも要因がある。
・リベルサスは毎日内服、オゼンピック皮下注は週1回投与のため、どちらが良いか患者さんに選択してもらう。
体重減少を期待したリベルサスの臨床使用例
・体重減量を兼ねたいとき、食事療法の改善としてリベルサスを使用する。
・肥満と発がんには相関関係がある。体重減少と乳がん、結腸がんのリスクが減少することが明らかになっている。
・トルリシティ皮下注→リベルサス内服へ切り替え(1名)の例。7mg/日を服用後、体重減少が見られた。脂肪は減少するが、筋肉量はほぼ変わりない。食行動が良くなったとのこと。
リベルサス服用後の食事の変化
・食べたいけど箸が止まる、自然と満腹になる、食事量が減る、脂っこい物を食べる気がなくなると感じる患者さんが多い。
・日本肥満学会が作成した「食行動質問表」は自分の食行動をチェックすることができる。
同種薬との比較
・DPP-4阻害剤は食欲低下しない。脂肪は減少するが、筋肉量はほぼ変わりない。
・SGLT2阻害剤(ジャディアンス:エンパグリフロジン錠25mg)と比較すると体重減少はエンパグリフロジンの方が早く見られるが、52週目以降は変わりなし。ジャディアンスでは脂肪と筋肉量の減少が見られた。
服薬指導の注意点
・服用後30分以上は食事・飲水は控える。ただ「30分は間をあける」と伝えると、30分後に必ず食事を取ると思われる方がいらっしゃるので、「30分以上経過したら」と伝える。
・生活スタイルに応じて指導する。
例として「朝目覚めたら薬を飲んでもらう。前日夜にベッドの近くに水と薬を置いておく。服用後は再度寝ても良い。」と伝えてみるのも良い。
・服用タイミングが近いビスホスホネート製剤と併用の場合。まずは処方医師と相談しながら決める。
・セマグルチドのコンプライアンスが良好であれば血中濃度が一定のためビスホスホネート製剤を優先するのも一つ。
・セマグルチドで嘔気、胃の不快感が多い。ただし一概に副作用とは言い切れない。アドヒアランス、糖尿病性神経障害の症例、胃内に食物が残っていた、遺伝子多型の差も考えられる。
・2ヶ月間は食事療法を頑張ってもらう。DPP-4阻害剤→セマグルチドへ変更後、血糖値が上がることがある。つまりDPP-4阻害剤が効果あったと考えられる。8週目の血糖値を評価する。
・セマグルチドは胃の不快感の副作用が生じやすい。例えば7→3mgへ減量、3mgの服用間隔を設ける、ドンペリドンやメトクロプラミド頓服で服用するなどで対応。
・副作用が強い場合は医師に相談する。
遺伝子多型による治療方法の違い
・日米で主流の糖尿病治療薬が異なる。米国はメトホルミン、インスリン、SU剤が多いが、日本はDPP-4阻害薬が多い。
・原因として遺伝子が由来と考えられている。
・日本を含めアジア系はインスリン分泌能が低い傾向にあり、インスリン分泌促進作用のある薬が効果的。
糖尿病と偏見(スティグマ)
・「糖尿病」と聞くと意志が弱い、自己責任だ、性格を否定される、などのイメージを持つ人がいるがこれは偏見である。
・2型糖尿病の原因は50%が遺伝子的要因、50%は環境要因と言われている。また環境要因のうち70%は社会的要因である。
・糖尿病患者は、糖尿病に罹患していない人と変わらない寿命やQOLを治療目標とする。
・まずは私たちの先入観を捨てることが大切。
所感
・リベルサスの吸湿性により、PTPシートは奇数日の場合は問い合わせるよう頭に入れておこうと感じた。
・今回調べてみたところ、ネットでは痩せ薬として情報が氾濫していることがわかった。必要な患者さんに適切に服用してもらえるよう指導をしっかりしていきたい。
・糖尿病治療薬では血糖値の他に、胃の不快感や吐き気などもモニタリングのポイントだと分かった。