女性のストレス3処方

【社内勉強会】

研修名:女性のストレス3処方

開催日時:2023/05/09 13:00 ~ 13:30

1.女性とストレス

女性は月経・妊娠・分娩・閉経といった、ホルモン変動があるため男性と比較して心身の不調をきたしやすいと考えられている。厚生労働省の「患者調査」では、気分障害患者数の推移、年代別患者数とともに、各年次、各年代において女性が男性よりも多い傾向であることがわかっている。

2.隠れ我慢に関する実態調査

株式会社ツムラによる、20代〜50代の女性10,000人を対象にした隠れ我慢(心身の不調を我慢していつも通り家事をすること)の実態調査結果は以下のとおりである。

・不調を我慢して家事や仕事をしているか?

→頻繁にある(34.3%)、時々ある(44.9%)、ほとんどない(14.9%)、まったくない(5.9%)

我慢している(頻繁にある・時々あると回答した)女性の割合が79.2%おり、それを年代別に見ると、20代(82.3%)、30代(83.7%)、40代(79.1%)、50代(72.9%)で20代・30代の若い世代の方がより我慢していることがわかった。

隠れ我慢をしている20代〜50代の女性1,000人(各年代から250人ずつ)を対象にどのような不調を感じるか調査を行なった結果は以下のとおりである。

・普段感じる不調トップ10(複数回答可)

1位  疲れ・だるさ(66.0%)

2位  冷え(48.6%)

3位  イライラ感(46.4%)

4位  肌荒れ(ニキビ・湿疹等)・しみ(41.5%)

5位  頭痛(40.9%)

6位  不安感(40.9%)

7位  PMS(39.1%)

8位  腰痛(37.9%)

9位  寝つきにくい・目覚めが悪い・眠りが浅い・不眠(37.9%)

10位  生理痛・生理不調・生理前後の腹痛(37.6%)

・感じても我慢する不調トップ10(複数回答可)

1位  疲れ・だるさ(23.8%)

2位  イライラ感(16.2%)

3位  不安感(15.6%)

4位  PMS(13.7%)

5位  寝つきにくい・目覚めが悪い・眠りが浅い・不眠(11.6%)

6位  冷え(11.3%)

7位  生理痛・生理不調・生理前後の腹痛(11.0%)

9位  言葉にしにくい不調(10.9%)

10位  便秘(10.7%)

感じる不調と我慢する不調の順位の差から精神的な症状が不調を感じているのに我慢しがちな症状であることがわかる。

*PMS(月経前症候群):月経予定日の3〜10日前から、イライラ、頭痛、浮腫、おっぱいが張る、眠気、落ち込む、便秘などの症状が現れるが、月経か始まると軽くなる症状のこと。

3.漢方薬による治療

ホルモン変動に付随する症状によって薬は使い分けるが、今回の勉強会ではストレスに注目して代表的な3つの漢方薬について学んだ。24番 加味逍遙散、54番 抑肝散 137番 加味帰脾湯。いずれも「柴胡」という生薬が共通して配合されており、イライラ・不安・不眠・抑うつなどの精神神経症状に用いられる。

24番 加味逍遙散

(効能効果)体質虚弱な婦人で肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、時に便秘の傾向のある次の諸症:冷え性、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症

(重大な副作用)偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害、腸間膜静脈硬化症

(特徴)多主訴に対して効果あり。月経前の精神神経症状にも処方される。5年以上の長期投与で腹痛、下痢、悪心嘔吐といった腸間膜静脈硬化症のリスクが高まると報告されている。原因は構成生薬のサンシシと考えられている。

*血の道症:婦人にみられる特有の生理現象に関連して起こる精神神経症状を基調とするさまざまな症状を指す。月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安や苛立ちなどの精神神経症状及び身体症状のこと。

54番 抑肝散

(効能効果)虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症

(重大な副作用)偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害、腸間膜静脈硬化症

(特徴)イライラを主とする焦燥感、怒りっぽい、環境ストレスによる神経過敏に処方される。高齢者や小児にも処方されることが多いため甘草による浮腫が問題になることがある。

137番 加味帰脾湯

(効能効果)虚弱体質で血色の悪い次の諸症:貧血、不眠症、精神不安、神経症

(重大な副作用)偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害、腸間膜静脈硬化症

(特徴)精神不安で気分が塞ぎ気味の時処方される。更年期障害・PMSにおける不安感の改善に加え、補中益気湯をベースにしているので疲労・倦怠感の改善にも適している。

所感

漢方薬はなんとなくの理解しかしておらず、婦人系の症状には加味逍遙散、イライラには抑肝散くらいのイメージであったが漢方薬ごとにキーワードが異なることがわかりもっと大事に扱おうと思った。私の中でのキーワードは、加味逍遙散は「イライラ、多角的」、抑肝散は「イライラ、気持ちのたかぶり」、加味帰脾湯は「不安、塞ぎ込み」。長期投与リスクやイメージの把握で服薬指導も行いやすくなりそうと思えたので今後、新規で開始する患者さんがいらした場合は少し踏み込んだ説明をしてみたいなと思えた。

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